根室金刀比羅神社例大祭2699-2678

あとがき


 夏
後の祭り

終わってみて
しばらくたって
思い出す

気づいたらあんなこともあったっけ


お祭で遊んだ後は
〆のラーメンを食べる

お腹がいっぱいになると
店の雰囲気を惜しみつつ
タクシー乗り場まで千鳥足

忙しいと言いながらも10分で配車
昔の根室だったら忙しいと言えばかなり待たされた

そんなお祭りの帰り道のある日
乗ったタクシーの運転手は礼儀の正しい若者だった
 
行き先を告げると静かに車が走り出した
祭りの余韻に浸りながら揺られること数分

子供の頃はあんなに広く感じていた根室市内も
こう見るとずいぶん小さい
程なく車は町内に入って行った

そろそろかなぁと財布を気にし始めると・・・
ピピピという電子音がした
あれ?まだ自宅までずいぶんあるのに
どうしたのかな?

運転手に聞くと
「僕はいつもこのくらいで支払に変えます」と言う

なんと!
こんな経験初めてだ
ワンメーターは違うかもしれない
売上に響く行為だから逆に心配になる

最近のタクシーは
到着する少し前で支払を押してくれるようになった

しかし
それにしても早すぎる

興味を持ったのでちょっと踏み込んで聞いてみた
地元の高校を卒業して昨年入社した新人だそうだ
なにとぞその初志を大切にして欲しいと思った

車から降り
窓越しに名前を聞いて
その名前を胸に刻んだ

根室の歯車を回す若者を又一人見つけた

夏
久しぶりに根室周辺を歩いて驚いたのは
鹿が民家へ出没していること

動物は人間に近づくべきではない
いや人間が動物に近づきすぎたか

子供の姿も見なくなった
小学校のグラウンドには雑草が生えていた
草なんてものが生える暇があるのかと,驚いた

ミツバチ族という言葉は死語だろうか
見かける旅人はみな
足で旅をするのではなく
財布で旅をしている

夏
どこの店にもいる
居酒屋国会
熱く語る呑口議員

食材の切り方に注文をつける客に出会ったが
その言い分がまたたいそう立派だった

叱咤のような口調は店中に響く大きな声

そりゃ原価計算も在庫管理も
トレーサビリティもない無知な議員は
まるで無敵だ

夏
お祭でひと際目立つのが御神輿
若い男衆が声を出して担ぐ姿は壮観で気持ち良い

そういえば神社の駐車場に自衛隊車両がある
なるほどやはりここもそうか
地元の担ぎ手が不足して
自衛隊に支援を要請するのだ

もちろん自衛官が担ぐのは大歓迎だ
転勤で根室に配置されていることも縁だ
滞在中の思い出として心に刻んで欲しい

夏
そういえば最近こんな偶然に出会った
知人の元自衛官が根室の防衛施設にいたことがあって
お祭に参加してあの御神輿を担いだそうだ

あんな太い担ぎ棒は初めてだったし
あの重さも初めてだと語ってくれた
なぜもっと有名になれないのか不思議だとも言ってた

さらにこう続ける
あのお祭は忘れない思い出だったが
境内の階段を登るところまでは覚えているが
どうやって登ったか記憶が無いのだという

たしかにあの階段は地獄だ
記憶が飛ぶほど無我夢中だったのだろう
私は労いの気持ちで頭を下げた

こんな話題に花を咲かせることも
終わった後の楽しみだ

夏
さて数年後
あの運転手のタクシーに偶然に出会った

ホッとした
しかし反面
心配でもあった

決して高い賃金ではない
持ち前のパワーと若さが通用するのは独身まで

故郷で働く若者の苦労が
脳裏をかすめる

夏
最近の参加者は
パフォーマンスが目立つようになった

見ていただくというよ
自ら楽しむもの

お祭りなのだから
本人が楽しむのは当然だけど
昔は祝う気持ちがにじみ出てくるものだった
それは一様に儀式という慎ましさがあったから

悦に浸る様子をそばで見て
見ている見物客もまた悦に動くものだった

相互が一体で悦に至りながら夏を過ごす
そんなお祭りが懐かしい


秋

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